モルジェロン病・最終章

とにかく当時の私は病名の存在など知る由もなく、また“糸が出てくるなんて訴える人が来た”くらいの認識しかありませんでした。

まず、「糸なんか出てないよ!」と如何に納得してもらうかを考えました。
鏡で糸が出る場所をよく見てもらい「ほら、糸なんて出てないでしょ!」を試したり、レントゲン写真を撮影して“何もないでしょ!”なんか当たり前です。

とにかく、こんなことでは全く納得してくれないのは明らかでした。

次に考えたことは、“入れ歯の人”だろうと“歯がある人”だろうと「もしかしたら糸が出てくる原因があるかもしれないから、ここの歯ぐきを切って開いてみましょう!」と言って切開して調べることで納得してもらおうとしました。
麻酔をして“痛い処置”をしたにも関わらず、“効果なし”でした。

次に実行したのは、患者さんの訴えをじっくりと聞き“何が希望なのか?”“どうしてほしいのか?”を調べてみました。
義歯の患者さんならば糸とは関係無い、“咬み合わせ”や“適合状況の改善”や“粘膜との当たり具合”、“神経圧迫の可能性等”を丹念に話ながら解決に努めました。

歯が関係しそうならば“歯の形態”、“神経の治療”、“歯周病の治療”、それでも納得してもらず、「歯を抜いてほしい」と言われた時は“本当にいいの?”と思いながら“抜歯”までしてブリッジにしたこともありました。

歯科医師としては“なんでこんなことしているのだろう?”“これはやり過ぎじゃないの?”と考えながらも患者さんが納得してくれる行為を突き詰めて行ったらこうなった。
そんな感じでした。

患者さんと良く話をし、希望を聞いて治療することにより、「これだけやってもらってもそれ程変わらないのだからこれ以上良くならない。」としぶしぶ納得してくれる患者さんや「まだ、たまに糸が出ることがあるけど大分良くなった。」と喜んでくれる患者さんもいてなかなか完治までさせることは困難であった記憶があります。

今ならインターネットもあり症状から病気を検索することも可能で、もっと効果的なアプローチがあったのではないかとも考えます。

こう考えると知らず知らずのうちに、今だ私の無知に起因した疾患に必死に対応しているのかもしれません。
私は、大学病院や当時老人病院と呼ばれた場所で勤務していたこともあり、親しい人にも話したことが無いような体験や経験を多くしています。

そう言えば、点滴の容器の中に“さかなが泳いでいる”と怯えたように繰り返し訴える患者さんの話、“お化けの話”などそれはもうたくさんあります。
機会があればそんな話も綴ってみてもいいかな?なんてことも考えています。今回のお話しはこれにて終了です。

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