ある種の薬を使うことで、顎骨壊死という顎の骨が腐ってしまうことがあり得るといった現象はほとんど知られていません。
これについて、歯科医師会雑誌で目に留まったこの気掛かりな現象を一部引用して綴っていきたいと思います。
BP製剤といってビスホスホネート系の薬剤を内服、あるいは注射で投与されている患者さんが大勢いらっしゃいます。
ビスホスホネート(BP)は破骨細胞に対し特異的に作用し、骨吸収を抑制し、骨粗鬆症や悪性腫瘍の骨転移などに広く用いられ、様々な種類の薬剤が存在します。
2003年にBP製剤関連顎骨壊死が発表されて以来、数多くの報告がなされ、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死や血管新生阻害薬を含めた顎骨壊死も報告され、しかも年々増加しているのです。
発生頻度では日本、アメリカ、欧州などではBP製剤経口薬で0.01~0.02%、悪性腫瘍などに使用される注射薬では1%前後と報告されているようです。
骨吸収抑制薬のデノスマブではさらに発生頻度が高くなり、血管新生阻害薬による顎骨壊死の発生も海外では多く報告されているものの、日本における発生頻度はまだ不明とのことです。
これら薬剤による顎骨壊死の発生率は低いものの、もし発生した場合は、可能なかぎり休薬という方法しか根本的な治療法が無く、治療も難渋する症例がほとんどなのが現状です。
ただし、これらの薬剤は悪性腫瘍の治療をはじめ骨粗鬆症に対する治療に強いエビデンスを有しています。
このため、超高齢化社会を迎えた我が国では骨粗鬆症による骨折リスクの減少によって、生活機能やQOLの維持、健康寿命の延長や死亡率の減少がもたらされます。
当院においてもBP製剤を処方されている患者さんが来院いたしますが、このようにとても役立つ薬剤であるにも関らず、歯科においては顎骨壊死という厄介な病気の発症が隠れているのです。
特に抜歯やインプラント治療、根尖・歯周外科手術など骨への侵襲を伴う処置では発生頻度が上昇することが判明しているものの、侵襲が危険だからといって、明らかに治療不能な歯牙や予後不良な歯は放置すべきでないとも書かれています。
いずれにせよ、骨粗鬆症等で治療を受けている方が歯科治療を目的として受診した際には、必ず申し出て頂きたいし、自分勝手な判断で申告しない場合は命取りになりかねないことを知っていただきたいと感じています。
また、顎骨壊死の予防のためにも積極的に歯科医院を受診して口腔内の管理をしていただきたいものです。

