水銀に関する水俣条約

今回は、日本歯科医師会雑誌の後ろの方のページにひっそり載った、目立たないけど重要と思われ、しかもほぼすべての方がご存知無いと考えられる記事を引用して綴ります。

2013年10月、水銀および水銀化合物による環境汚染、健康被害を防ぐため「水銀に関する水俣条約」が国際連合条約として採択されました。

水俣条約という名称は、有機水銀による公害病である水俣病(海外ではMinamata disease として広く知られています)と同じ被害を繰り返してはならないという決意のもとに名付けられました。

この条約は、国際的な水銀管理を目指すものであり2016年4月の時点で129ヵ国が締結しています。
日本歯科医師会は、この条約の締結に際し「環境汚染対策としてアマルガム使用の廃絶に取り組む」とし、平成28年度の診療報酬改定で充填用銀錫アマルガムが廃止されたことにより、現在保険治療でアマルガム充填をしている歯科医院は無いと思われます。

私自身、治療でアマルガム充填を行なった経験が無く、30年前学生実習で1度だけ模型相手の経験があるのみです。

治療時に患者さんの口に中を覗いた時、アマルガム充填を見つけると「いったい、何年前の治療なんだろう?」と考えることもあり、また、私より遥かに若い年齢の患者さんにアマルガム治療を見つけると「あら~、アマルガムだ!高齢の先生が治療をしたのかな?」なんてことを思ったりしています。

また、歯科用カタログにアマルガムミキサー(治療用のアマルガムを作成する機械)が掲載されているのを見つけ、「購入する歯科医院があるとは思えないけど!」などと呟くこともありました。

そうは言っても、歯科用アマルガムの安全性については国際的に確認されており、「う蝕などの問題が無い限り口腔内のアマルガム修復物は原則として除去すべきではない」とされています。
また、除去する場合は「適切な回収方法を検討すべき」ともされています。
日本国内では排除されても、海外における歯科用アマルガムの使用は、現在でも修復材料として広く使用されています。

WHO(世界保健機構)は、水銀とヒトの健康について水銀含有保健医療機器の輸入販売と水銀使用の阻止を訴え、歯科用アマルガムからの水銀は世界全体の水銀排出量の約1%であり、一般下水中の全水銀の3分の1が歯科医院から排出されていると報告しています。

その昔、大学病院で当直していた頃は、「水銀体温計で熱を測っていたら口の中で割れてしまい水銀を飲み込んだけどどうしたらよいのでしょうか?」なんて問い合わせを受けたことがあったっけ!

UNEP(国連環境計画)は水銀が人体および環境に及ぼす被害について警告しています。
アマルガム修復の頻度は東アジア・東南アジアおよびEUで多く、世界全体では歯科用アマルガム中の水銀として年間約340トンが使用され、そのうち約70~100トンが環境中に排出されると算出しています。

また、アマルガム充填の既往がある人を火葬すると、水銀は完全に大気中に放出されるが、その量は1年に約3.6トンであると報告しています。

FDI(世界歯科連盟)は、歯科アマルガム由来の水銀による環境汚染に対し注意を呼びかけ、水俣条約を受けて歯科アマルガムの段階的廃止と進行状況を監視していくとしています。

このように世界の様々な国際機関が水銀使用に対する警鐘を発し、水銀の環境汚染の実態を報告しています。
これを読んだ皆さんも自身の口の中をじっくり見つめ直すチャンスかもしれません。
次回は米国、EU、日本の現状について綴ってみることにしましょう。

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